4月のエピソード

 高校1年の4月の今頃、私はまだ学校に行っていませんでした。入学式が近づいて来るにつれて合格した安心感よりも、受験直前に第一志望を変えて結局また行きたい高校には受からなかったことや、通っていた中学とは校風も何もかもが違うことへの不安から高校に行かずに大検を受けたいと思うようになって、入学式も欠席してしまいました。

 両親にもその気持ちを話してはいましたが、高校に行かない選択肢など容認できるものではなかったようで一度も賛成は得られませんでした。そんな中で、学校に行かない時間をそれまで行ったことのなかった居住地域の観光名所に行ってみたり、ただぼんやりと散歩に行ったりして過ごしていました。高校の教科書を自習してみたりもしていた記憶があります。

 それでも、他の友人達が高校から帰ってきたりバイトしているところを見かけたりすると少しづつ何だかこのままで良いんだろうか・・?と思うようになりました。担任の先生から何度か電話が掛かって来ていたのは知っていても出ないようにしていましたが、両親が私が高校に行かないのは心の病気だろうなどと言い出したのもあって、ある日の夕方掛かってきた電話で話をしてみました。

 偶然か必然かは分かりません。私の1年時の担任は金八先生のような人で校内でも有名な先生でした。電話に出た時の私は10代のやや反抗的な時期だったこともあり、かなり頑なな印象だっただろうと今は思いますが、一度学校においでよと粘り強く説得してくれました。

 行ってみたら意外と楽しいことも沢山あって、高校3年時にはもう少しこのままみんな一緒に居たいと思えたからこんなことが書けるんだとは分かっています。大検を受けて予備校に通った方が良い人生を歩めたかもしれないとも思う時もありますが、あの高校に通ってみてよかったなと今は思います。